2 回目の喜界島訪島

喜界島黒糖 – 黒糖製造を体験する

お土産に渡すと、かなり喜ばれる喜界島土産がある。

それが、喜界島産の黒糖だ。
黒糖をブロック状にして袋詰めにしたものなのだが、お茶うけとして、そのままぱくぱくと止まらず食べてしまえるほど、美味しい。

実は私、喜界島産の黒糖を土産として配ったとき、ちょっと驚いたことがある。

普通、お土産を配ったりすると、その場で 「ありがとー」 と言われて、だいたいそれで終わるのだけれど。
喜界島産の黒糖を配った人たちからは、かなり高い割合で電話なりメールなりをもらった。

曰く、「これは美味しい!また買ってきて。」 と。

こんなに反響をもらったことに驚いてしまい、次回の訪島時には、ぜひとも製造現場を見学に行きたいと考えていた。

それが実現した形となった、今回の喜界島黒糖の工場見学。
下記に纏めてみようと思う。

さとうきびの美味しさを、そのまま。

やってきたのは、喜界島黒糖株式会社の黒糖工場。

朝の 8 時に訪れたのだが、工場からは、既に煙が上がっていた。

今回、黒糖の製造工程を一通り体験させてくださるということで、父の作業着を借りて、張り切って現場に望んだ。
案内してくださったのは、社長の谷本さん。

早速、作業を体験させていただいた。

まずは、黒糖の原料となるさとうきびを収穫する。
刃物で根本から切り倒し、回りについているものを別の道具で剥いでいく。

その後、さとうきびを搾り器にかける。

さとうきびを放り込む穴は、なんだか古代石像の口のよう。
「神前式」 と書いてあるのが意味深だ。

四角い口の中に、どんどんさとうきびを突っ込む。
そうすると、搾り汁が左側のタンクに貯まる。

まさに、さとうきびの美味しさを 「そのまま」 搾り取った貴重な原料だ。

搾り汁を取られた搾りカスは、このベルトコンベアを通じて、工場裏手に排出される。

どんどんと出てくる。

搾りカスはこんな感じ。

強力な火で、煮詰める。

絞り汁はすぐさま釜に移し、強力な火で煮る。

焦げ付かないように、見守る。

凄まじい勢いで泡立っている。

この釜、火力がかなり強い

スタジオジブリ映画 『千と千尋の神隠し』 で、ススワタリ(まっくろくろすけ)が石炭を放り込む 「炉」 のシーンがあるが、何となくその情景を思い出してしまった。

この火力で、水分が飛ぶのを待つ。

タイミングの判断は、味覚。

数十分ほど経つと、搾り汁がどろっとしてくる。

焦げ付かないように、ひたすら混ぜる。

ある程度のところで、火から上げるタイミングをみる。
ここで判断の基準となるのが、「舌の感覚」。
味や舌触り等、人の判断によってタイミングをみる。

谷本さんに訊いてみた。
「タイミングを機械的に判断することはできるんですか??」

谷本さんの答え。
「温度計や見た目である程度は機械的に判断できるかもしれないけれど。やっぱり最終的には、舌が一番頼りになるかなぁ。」

やっぱり、経験がものをいうということだ。
まさに、職人の業ということか。

ついでに訊いてみた。
「指で掬うとき、熱くないですか?」

谷本さんの答え。
「熱いよ。笑」

そりゃあそうだ。笑
変なこと訊いてごめんなさい。

最終工程へ。

さて、いよいよ火から上げる。
掬って、攪拌機へ移す。

ひたすら、移す。

全て移し終わったら、攪拌する。
ぐるぐると回す。

ある程度攪拌できたら、攪拌機下のスライド式の穴を開き、そこから天板に流し込む。

ここまで来ると、一息つける。
黒糖が冷めるまでの時間、「ちょっと休憩しましょう。」 ということで、お茶と黒糖をご馳走になった。

あー、やっぱり美味しい。
前から思っていたが、何となく、沖縄産の黒糖と風味が違う気がする。
まろやかで、甘さが口の中に残りすぎず、スッと喉の奥に消えていく。
ばくばく食べてしまう。

休憩中に、面白い話を聞いた。

今でこそさとうきび搾りは機械化されているが、昔は当然、電力がない。
そこで、大きな搾り器の上に巨大な材木を据え付け、それを馬に回させたという。

見えにくいかもしれないが、これが当時の写真。

場所によっては牛に回させるところもあるらしいが、喜界島では昔から馬を使っているらしい。

谷本さん曰く、
「牛はちょっと愚鈍だからね。」
と。

なるほど!
確かに馬の方が、シャキシャキと動きそうな気がする。

関係ないが、愚鈍と言えば、ちびまる子ちゃんの小杉だ。
彼はよく、永沢と藤木に 「愚鈍」 だと言われている。

さて、黒糖もそろそろ冷めた頃。
最後の作業に入る。
ブロック状に切断して、袋詰めにする作業だ。

天板を作業台へ移動し、ほどよいサイズに切る。

これくらいの大きさ。

まだ、中はほのかに温かい。

大切に作られた、味。

実は、喜界島黒糖株式会社を経営する谷本さんご夫妻には、個人的にとてもお世話になっている。
私が妻と結婚した際や、娘が生まれた際、温かく祝福していただいたり。
この工場見学の前夜も、妻の実家の宴会に参加いただいたりと、親しい存在として見守っていただいている。

この黒糖も、その谷本さんたちによって、大切に作られた味だ。
ひとつひとつ丁寧に、手作りで作られている。

自然そのままの黒糖を、ぜひ一度、ご賞味いただければと思う。